2011/11/01

2(第一部)

 一番楽しい時というのは、僕流に言えば気持ちが「ワクワク感」で一杯になっている時だ。美味しい食事のことを思い浮かべて見よう。お腹が空いていて、今これから一流料理人の作る大好物の料理が食べられるという時の気分、それを実際に食べ終わったあとの気分と比べたら、食べる前の気持ちのほうが断然ワクワクして楽しいと思う。この「ワクワク感」を求めて、子供の頃からいろんなことに夢中になった。記憶に残っている最初に寝食を忘れて楽しんだことはビー玉遊びだ。

 僕の育った神奈川県の茅ヶ崎では、地面に描いた「シマ」と呼ぶエリアを使った玉取り勝負が主流だった。「シマ」のなかに一人一人が一定数の玉を置く。この玉を「シマ」からはじき出せば自分のものになる。但し、その時に自分の手玉を「シマ」の中に残してはいけない。つまり、「シマ」の中の玉をはじき出しつつ、手玉も「シマ」の外に出す。ビリヤードに通じる読みと技術が必要だ。これにはまった。大学生になってからビリヤードに熱中したが、このビー玉体験が影響していると思う。

 このビー玉遊びには、もう一つの楽しみがあった。ビー玉のコレクションだ。通常「シマ」に入れるのは濃いグリーンの直径1センチほどの小玉だが、一回り大きな色ものや透明なもの、リボン入りなどのビー玉は小玉の2個分、3個分にカウントされる。これを「シマ」に入れてゲームに参加することも出来るのだが、交換やトレードも行う。つまりポケモンに通じるコレクションとしての楽しみやプライベート・マーケットでの相場をめぐる楽しみもあったのだ。その時々のトレンドもあり、手玉にステンレスのベアリングを使うのが流行したり、陶器製の大玉や大理石のものに注目が集まったり、各々に個性を主張して楽しんだ。

 既に30年以上も前の子供の遊びだが、楽しみの本質は現代とほとんど変わらない。放課後のビー玉勝負に向かう前の「ワクワク感」は「バーチャ」や「ディアブロ」の楽しみ方と全く同じだと言ってもよい。

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